小説 タロット占い師 アキの冒険 1-4

不意の事に、ドギマギしていた私にマスターから「呼んでいるから行ってみなさいよ。」と勧められた。仕方がないので、恐ろしい老人の前に、それも、ゆっくりゆっくり行ってみる。老人は命令するように「ここに座りなさい。」私は、いやいやながら「はい。ここですね。でも私は占ってもらうつもりはありませんので、占いは信じていませんから。」いんちき占い師にバカにされたくないので、強気で、否定をしてみた。すると老人は面白そうに笑い「お~。気が強い娘やの。まあ、いいから、まず両手を前に出しなさい。」老人の体の奥底からにじみ出る、気迫に圧当された私は「こうですか?」両手を顔の前に出していた。すると、老人は急に機嫌が悪くなり「手の裏じゃない。表だ。わし位になると表で分かるんじゃ。」私はくちを開けたまま、目を見開いて「はい。え~。それってどういう事?」老人は、私の言葉も平気で無視をして鋭い目つきで「やっぱりそうか。」私はますます不安になり「何なんですか?こわか~。」ずいぶん恐ろしくなってきた。「何かあるんですか?」でも老人はその後、何度聞いても、何も言ってくれない。その日は変人おじいさんのおかげで、欲求不満になったまま家に帰る事になってしまった。この時のふたりの出会いが、私の人生を大きく変えることになった。後で気ずいたのだが、老人との不思議な縁を感じてしまう事がたくさんあった。私はそれから数日の間、何もないまま平和に過ごした。今日又、あの喫茶店の前にいた。今度も気になってしまい、店の中をそっとのぞいてみた。私のその姿をマスターに見つかり、声をかけられた。「いらっしゃい」私は小さい声で「あの~。又、コーヒ飲みたくて。」この前のカウンター席に座り、アメリカンコーヒーを注文する。「あの。この前の占いの先生、今日は?」マスターが普通に「今日は、まだきてないね。」私は首をかしげて「いつもきているとは限らないのか?」すると、マスターはびっくりした顔で「あれ~。お客さん、あの先生が気になるんですね?」私は急に恥ずかしくなり、思わず「いえ、別に。」今日は世間話しだけして、おいしいコーヒーをいただいて帰ることにした。それから数週間、何度も店に行くようになって楽しい常連さんになれた。マスターのコーヒーファンにもなって、得意なコーヒーの話しにも、花が咲き、時間を忘れる位に、充実した日々を送っていた。運命の師匠、老人占い師とも何度も会うようになり、親しくなっていく。最初の印象とは違い、ずいぶん優しい人だと分かっていく。老人に、占いの修行をしてみる様にすすめられるが、気のりしないまま一週間が過ぎてしまっていた。そんな私が、大変な事件に巻き込まれる事になったのだ。これが、私の最初の謎解きである。次回に続く