小説 タロット占い師 アキの冒険 1-11

アキと竜馬の作戦会議が始まる。まず先に、代議士の近藤氏に会うことにする。事情を説明して、鈴木の行方をストレートに聞いてみることにした。アキには、返事の予測ができる。それは、多分「自分は知らない。」と近藤の口から出る言葉だ。それ以上の質問は時間の無駄なので、その後に秘書に会いに行くことにする。秘書は何人もいるらしい。代議士事務所では、それが当たり前なのだろうか?近藤と面談しているときに同席しているか、様子をうかがっている秘書が疑わしいのではないか?「何か関係していたら気になるので、顔を出すだろう」と竜馬が言い出した。アキもその通りだと思い、賛成する。二人で観察する人物の分担を決めることにした。アキは、代議士の近藤。竜馬は、秘書とその他の人物。重要なのは見落としがないように行動を細かく観察することだ。約束の日が来たので、二人は恐る恐る、代議士事務所に出向いた。まず、広くてきれいな応接室に通され、事務員らしき女性が二人にお茶を出してくれた。数分間待つと、まだ若い、体格の良い、ニコニコと笑顔の代議士、近藤氏が現れた。見るからに、穏やかそうな人柄に思われる。アキは「騙されないぞ~。」と心の中で叫び、すぐに緊張した。二人はそれぞれの自己紹介をして、要件に入っていった。アキが今までの経緯を伝え、真すぐな目で、近藤氏に尋ねてみる。「私が以前勤めていた職場の上司を探しています。鈴木さんという男性をご存じないでしょうか?とてもお世話になった方なのです。現在、ホテルのマネージャをしています。」一つ大きく息を吸ってから「その鈴木さんが家族への伝言で、近藤代議士に会いにいくと残しています。その後に、行方が分からなくなったのです。そのうちに、警察の方も聞き込みにこられるかも知れません。」アキは心臓がドキドキするのを我慢して、近藤氏を挑発してみた。はったりだった。警察の聞き込みはないに違いない。ばれたら、どうしようかと思ったが、これ位は言わないと、何も情報が得られないと思ったのだ。竜馬は心の中で叫ぶ。「アキ先輩、どうしたんですか?こんな打ち合わせしてないよ~。」 この展開に顔は蒼白になり、手には汗と震えが止まらなかった。《さすがに博多の女は土壇場で強い。腹のくくり方が違う。》竜馬はそう感じて体中に緊張が走った。次回に続く