先月の末の夕方に、いつもの通りに我が家のチワワの散歩に出かけました。なんとなく薄暗い空を見上げてみると、とても美しい満月です。あまりに赤いので見とれてしまいました。皆既月食の前日だか、当日だか忘れましたが、【ブルームーン】だという事でした。一月に二回満月が来るのです。私は我が愛犬のリードをしっかり握りしめ、車に引かれないように道路沿いによけました。よく見える位置に少し動き、又、満月に見入ってしまったのでした。するとその月から細くて、まっすぐな明るい光の線がたくさん、まさに私の目前に下りてきて私とつながったのです。何だろう?これは?日ごろから私は、目が悪く、メガネをかけています。まして薄暗い夜です。目の迷い、気の迷いだろうと思い、赤く、黄色い月を又、うっとりとしばらく眺めていました。すると今度は、心の中に、目の裏に何かが浮かんできたのです。それは大きな宇宙。果てしない銀河系。知るはずもない光景。やがて、心が穏やかになり軽く微笑みさえもあふれてきて、 「私はここからやってきたのだと確信しました。そして、いつかここに帰るんだな~」と。いつかあそこに戻っていくのだと確信したのです。そうすると、不思議なことに今までの死への恐怖心が嘘のように消えていくのを感じることができたのです。空から来て空に帰る。簡単なことです。当たり前のことです。これが普通なのだと納得したわけです。私は何者でもないのだと解ったのです。私のことですが子宮頸癌になり手術後、もう3年が過ぎました。癌の経験者の誰もが思う事ですが、何年たっても再発の恐怖に心が重くなり、そして全ての気持ちが囚われてしまいます。その最悪な事態を想像するだけで、何も手がつかない状態になるのです。そういう意味ではいつも、心が晴れる日はないのです。ですが、私はこの経験から悟ったのです。私は何者でもなく、この命も誰のものでもないということを・・。もう、怖くはありません。私の人生において、怖い事はほとんどなくなりました。